私の勤めている会社の正社員がこの3月に退職する。
理由は色々あるだろう。
彼は高卒で入社して5年が終わった23歳の男性社員である。
高校時代の同窓生が大学を卒業して、同じ会社の営業部門に就職した。
3ヶ月の研修で、彼と同じ物流部門のこの会社にやってきて再会した。
仕事内容は、整備作業である。
グループ会社では、一番の3k職種の部門の会社である。
朝から晩までホコリ舞う薄暗い大きな倉庫の中で、汚れた机やイスを整備する。
力作業もある。
しかし、3ヶ月の研修が終わると彼は、本社の営業部門へ戻る。
初任給は、基本給が20万円弱である。
一方、高卒で入社して5年目の彼のほうは、基本給が16万2千円である。
4年間で1万2千円昇級しただけである。
彼はこの会社では、50人中5人ぐらいしかいない総合職のエリートである。
一般職は、彼と同じに入った者が、15万4千円である。
つまり、1年に1000円しか基本給が上がらない。
9月に保管グループから運営グループに移動した。
この会社では、保管グループは作業員としての仕事がメインである。
運営グループは、会社全体の推進部門だ。
仕事内容は、他のグループ会社との連携や商品管理が主である。
グループ会社の全体像は、
グループ会社全部の人事・財務を担当するホールディング会社を頭に、リース業の営業部門を担当する会社が利益を稼ぎ出す部門である。
その末端で流通と商品の整備と保管を請け負っているのが、私のいる会社と言うことになる。
彼は、末端の会社の中の一番重要な心臓部門に配属になったことで、始めてグループ会社の全体像を理解することが出来たのだろう。
45歳にもなって、薄暗い倉庫の中で、ホコリにまみれ、朝から晩まで、自分よりもはるかに年下の上司から、糞味噌に文句を言われながら働いている先輩を見て、将来の自分の姿を想像して、耐えられなくなったのかも知れない。
有給を消化しながら、彼が何度か私の所にやってきて、近況報告をしてくれる。
コープの配送部門の1次試験に合格したそうだ。
当面は、働きながら勉強して2級建築士の資格を取得したいと言っていた。
「この前、兄と父親と3人で飲んだんですよ。その時に始めて、父親の本音を知りました。」
「どうだったの?」
「父は私たち兄弟に、大工の仕事を継いでほしかったみたいです。」
彼の父親は30代の時に農業をやりながら大工の見習いとなって仕事を覚え、やがて大工の棟梁になったそうだ。父親の年収は農業と大工仕事を合わせて、数千万円の売り上げがあるそうだ。
そして、兄は大学を卒業し、建築関係の会社の正社員であり、現在一級建築士の資格を取るために勉強しているという。
「父親が、お前達にその気があるのなら、一緒に会社を興そうと言ったのです。現在父親は、建築関係の仕事を請け負って、下請けに回す仕事を中心にやっているそうです。今年度は、すでに2000万円の利益がでていると言ってました。」
「とてもいい話だね。」
「ええ、なんか将来が明るくなってきた感じです。」
サラリーマンは、学歴があっても出世するとは限らない。
しかし、学歴が無ければ、出世するどころか、低賃金で働かされ、常にリストラのリスクにさらされる。
これからはますます、厳しくなっていくだろう。
彼の父親は、二人の息子の教育を丁寧にやった感じを受ける。
長男には、大学まで進ませ、建築関係の会社に就職させながら、次男の「機が熟す」のを待っていた感じがする。
工務店の仕事とは?
彼の父親は、夫婦で塗装屋を営業していた。教え子は彼の長男である。
私の家の壁は父親に、二度ほど塗り替えて貰ったことがある。
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