『化学肥料の使用が慢性化した土壌と自然の土壌との大きな違いは「微生物」だ。
かつての農地では落ち葉や動物の糞尿なとの有機物を土中の微生物が無機物に分解し、それを肥料に作物が育った。
しかし化学肥料は分解されることなく植物に吸収されるため、エサとなる有機物を失った微生物は死滅してしまう。
久保の調査によると、日本には微生物が計測できないほど「ゼロ」に近い農地が少なくないという。
微生物のいない土壌では植物病原菌や病害虫が繁殖しやすくなり、それがまた農薬の使用を招くという悪循環に陥っている。』
『日本の化学肥料や化学農薬の使用量は世界で1、2位を争うという衝撃的なデータがある』
化学肥料使用量の比較(1haあたり)
HelloSchool社会科地理(日本の農業)より
有機肥料の含有微生物量による植物の育成比較
畑に良い土とはなんだろう?
良い土の基本は、『水はけが良く、水持ちが良く、通気性が良い土』である。
●良い土の条件は、以下の7点
1.根が十分に張れる
2.通気性と排水性が良い
3.保水性・保肥性にすぐれている
4.適正な酸度である
5.清潔である
6.異物が混ざっていない
7.微生物が多く含まれる
『土には植物の他にたいへん多くの生物が住んでいます。それらはネズミやモグラのように大きな動物、ミミズや昆虫、そして、カビや細菌のような微生物です。これらの生物は、有機物の物理的分解、化学的分解合成などの形態変化、移動、循環などに重要な役割を果たしています。動植物の遺体、生ゴミなどが土の中でしだいに分解されて形が無くなるのもこれらの生物の働きです。』
連作障害を起こす土はどのようになっているのだろうか?
連作障害とは? 原因には主に四種類。
①該当の植物が、根より毒素を排出した。(アレロパシー)
②その系統の作物に必須の微量要素成分が欠乏した。
③病原菌が残された。
④ネコブセンチュウやネグサレセンチュウ等の動物性の虫が残された。
『微生物農法とは、農薬や肥料の使用を抑えることで土壌を微生物の生息しやすい環境に整える農法。
または、農業に適すると考えられている微生物資材を投入することで土壌改良を行い、作物の育成を促進しようとする農法をさす。
植物は本来、枯れた植物や糞尿など有機物の分解などを行い、植物にとっての養分を生み、また土の団粒化を促し水はけや通気性を向上させる微生物と共生することで生きている。
しかし無機物である化学肥料を多く使いすぎた場合、土壌中の有機物を食べる微生物は数を減らす。
そのため土壌中の微生物相のバランスが崩れ、植物は連作障害等の病気にかかりやすくなる。
それらの病気を防ぐために農薬を多く使用することになり、農薬により微生物はさらに減少する。』
連作障害を防ぐには
『ナス科やウリ科、アブラナ科など特定の作物を、同じ場所で長年栽培していると生育が悪くなったり、枯れてしまったりすることがあります。この現象を「連作障害」といいます。
この原因は前に作った野菜や使用した肥料により、土壌中の成分バランスの崩壊や病害虫の発生が主な理由です。また連作障害の出やすい野菜と出にくい野菜がありますので、以下の表を参考に栽培プランを立てましょう。
さまざまな要因により起こる連作障害を効果的に抑制するには、次のような方法があります。一つの対策のみ実施するのではなく、それぞれを組み合わせて行いましょう。』
①適切な施肥管理
土壌診断などを行い、作物の生育に応じて必要な施肥を行うことで、生理障害の発生を抑制することができます。
②有機物の投入
緑肥作物や堆肥などの有機物を土壌に投入し、土壌中の微生物を多くさせることで、病虫害の発生を抑制できます。
③コンパニオンプランツの活用
2種類以上の植物を近距離に植えて栽培すると、(1)生育が良くなる (2)病虫害が減る などの効果が現れることがあり、そのような関係にある植物同士のことを「コンパニオンプランツ」といいます。例えば、キュウリの場合には蔓割病を防ぐために葉ネギを植えることがあります。
④作物を作らない時期の湛水管理
多くの病原体や害虫は水中で長時間生存できないので、ほ場に一定期間水を溜める「湛水」を行いましょう。また、水溶性の塩類や肥料成分も湛水により、溶け出てほ場外に排出できるので、塩害の軽減にも効果があります。
⑤輪作(ブロックローテーション)
野菜の連作障害は、同じ作物を同じ場所で栽培することで発生しやすくなるので、毎年どの場所で何を栽培するかを十分に計画し、常に違う作物が植えられるようにしてください。
⑥接木苗の活用
果菜類の栽培で、連作障害や生理障害が心配な場合は、接木苗を使用することで軽減できます。
⑦土壌消毒
夏場の気温が高い時期に、ポリマルチを土壌表面に張り、太陽熱により土壌温度を上昇させて物理的に病原体や害虫を駆除する太陽熱消毒法があります。