2017年1月30日 8時0分 デイリー新潮
『■巨額の補助金「Fランク大学」驚愕の授業(1)
センター試験が終わって受験シーズンも佳境に入ったが、受験生たちの必死の追い込みをよそに、最高学府の門をすでに潜っている学生たちが、be動詞の学習に精を出していた――。ニッポンの将来を思うに背筋が寒くなるFランク大学の驚くべき授業内容とは。
昨年11月6日、明治神宮外苑で開催されていた東京デザインウィーク2016の会場で、アート作品が出火し、5歳の男児が亡くなる痛ましい事故が起きたのを記憶している方は多いだろう。作品を制作したのは日本工業大学の学生有志グループだった。
事故後、学生たちが、工事現場などで使用される白熱電球を、あろうことか発火しやすいおが屑だらけの環境で点灯していたことがわかった。中学生、いや小学校の高学年でも、白熱電球に燃えやすいものを近づけると危険なことぐらい知っている。日常生活レベルの科学的知識があれば、この事故は防げたかもしれないのである。
文部科学省
■Fランク大学のあり方
国立の東京工業大学に比肩しうるほど立派な名前の大学に通う学生がいったいなぜ、この程度の基礎知識を身につけていなかったのだろうか。受験情報に詳しいジャーナリストが語る。
「日本工業大学は前身の学校から数えると100年以上の歴史がありますが、偏差値はだいたい35前後。河合塾の2017年度『入試難易予想ランキング』では37・5で、いわゆる“Fランク大学”に該当します」
Fランク大学とは、入試の倍率が低く、不合格者が極端に少ないか、またはまったくいないため、偏差値を算出できない大学や学部を「Border Free」と分類したことに由来し、入試で名前さえ書けば入学できるような大学を揶揄するものとして定着した俗語である。先のジャーナリストは、
「むろんきちんと学んでいる学生はいますが、こうした事故が発生したとあっては、Fランク大学のあり方を考えるのは急務です」
と続ける。実際、芸術系など教育水準は高いものの、入試が実技なので偏差値を算出できないといった事情でFランクに分類されている一部の大学を除けば、その多くが驚くべき水準の授業をおこなっているのだ。
■“学び方”を学ぶ
15年、文部科学省は、主に新設大学を対象におこなった「設置計画履行状況等調査」の結果を報告した。これは新たに設置された大学でおこなわれている授業内容などについて、かなりつっこんだ指摘をしたものだ。なかでも千葉科学大学、つくば国際大学、東京福祉大学は、その授業レベルに対して「是正意見」がつけられた。要するに、大学と呼ぶにはあまりに低レベルなので、早く改善しなさい、というお達しである。
16年の報告では状況はさらに悪化した。東京福祉大学にはさらに重い「警告」が付されたほか、新たに、授業内容に「是正意見」がつけられた大学は、札幌保健医療大学、群馬医療福祉大学、横浜創英大学、新潟医療福祉大学、びわこ成蹊スポーツ大学、大阪観光大学、天理医療大学、福岡工業大学、札幌大学女子短期大学部と、全9校にもおよんだ。しかも調査対象450校のうち、なんらかの意見が出された大学は270校にのぼったという。
ちなみに、事故を起こした日本工業大学は意見を出されていないが、その“優秀な”大学にして、内情は冒頭で触れたような具合なのである。
「Fランク大学に多いのが、聞いただけではわけがわからない学部や科目名で、日本工業大学にも『大学での創造的学びⅠ』という科目があります。“学び方”を学ぶことが目的なのだそうで、授業で学ぶのは“ほかの学生とかかわる経験をしてみる”とか“周りを観察して状況を把握しようとする”といったこと。ため息が出ますね」(同)
■英語は「単数形と複数形」
Fランク大学の“ユニーク”な授業は枚挙にいとまがない。たとえば、先の河合塾「予想ランキング」では偏差値37・5で、文科省から定員不足について改善意見を付された北海道の北翔大学。ここの生涯スポーツ学部の必修科目である「基礎教育セミナーⅠ」は、到達目標がすさまじい。
〈大学での講義を受けるために必要な知識・スキルを身に付けることができる〉
〈大学で講義を受ける基本的な姿勢やマナーを身に付けることができる〉
さらには、
〈基礎学力の向上をめざすことができる〉
というのである。あらためて目標として掲げられると、なにやら難しそうに見えるが、大学に入る前に身につけていて当然のことばかりだ。そもそも「講義を受けるマナー」など、小学校でおぼえておくことではないか。しかし、関西地方のあるFランク大学の講師によれば、
「授業中に殴りあいのケンカがはじまったことがありました。講義を受けるマナーを学ぶところからはじめないと、もはや授業にならないのです」
不良マンガ顔負けの状況だというのだ。もっともマンガでは、舞台が中学か高校と相場が決まっているが、それが大学で起きているのだから、ことは深刻だ。さらに、北翔大学の「国語の基礎基本」では、
〈小学校・中学校・高校で学んだ漢字の読み書きについて振り返ります〉
とのこと。小・中・高で学んだ漢字が読めずに、学生たちはどうやって大学に入ったのだろうか。
***
巨額の補助金「Fランク大学」驚愕の授業(2)へつづく
特別読物「漢字のおさらいとbe動詞……巨額の補助金『Fランク大学』驚愕の授業――
白石新(ノンフィクション・ライター)」より
白石新(しらいししん)
1971年、東京生まれ。東南アジアと横浜で育つ。一橋大学法学部卒。出版社勤務を経てフリーライターに。社会問題をはじめ、食・スポーツ・モノなど、生活に密着した視点から幅広く執筆している。 「週刊新潮」2017年1月26日号 掲載』
生徒指導困難校と言う高校に3年間勤務したことがある。
その学校の数学の先生が、入試問題の問1の問題の1問でも正解して入学してくれると助かるのですがねと言った。
ちなみに以下の問題は、昨年度の神奈川県の県立入試問題だ。
(ア) -12+3=
(イ) 3/4-8/9=
つまり、(ア)の正負の計算ができない。
これは、中学1年生で習う内容である。
(イ)の分数の正負の計算は、多くの合格者が出来ない。
そして、15年ぐらい前の話であるが、彼らの卒業後の進路が問題である。
① 就職して正社員となる。
② 人気の専門学校に行く。
③ 入れる大学に行く。
一番難しいのが就職して、正社員になることであった。
そして、一番簡単なのが自己推薦入試と言う方法で、Fランクの大学に進学することである。願書を出して、お金を払えば全員が合格できるからであった。
安易な気持ちで借金をして大学に進学した者は、卒業後に借りた金を返せないで貧困難民となってしまうものが出てきてしまった。
すなわち、大学を出ても、より以上に就職して正社員になるのは難しくなってしまった。
企業が大卒者に求めるのは大卒という学歴では無く、専門的な知識と企業リーダーとなれる人間力であるのは、当然のことである。
東大に自力で入れるような頭の良い者は、生活保護家庭であろうと18歳になれば、自立してアルバイトをしながらでも、大学生活を送ることができるだろう。
以前、ニュージーランドに行った時に、日本人の大学生にたくさん出会った。
彼らは、レストランなどでアルバイトをしながら大学に通っていた。
ニュージーランドの国立大学は日本ほど難しくなく、授業料も安い。
アルバイトしながら大学にも通い、生活もしていた。
また、教え子の一人に高校卒業後にオーストラリアの姉妹校との交流で知り合った友人の紹介で半年間の語学留学をした。アルバイトをしながら英語を勉強した。
次の年、カナダの短大に自力で入学した。
その後、カナダの航空会社でキャビンアテンダントになって、カナダと日本を行き来している。
希望した者が無料で大学に行けることは、必ずしもいいことでは無い。