先日、100mで10秒01の日本人歴代2位の記録を出した桐生祥秀(京都・洛南高)が200mで高校新記録を出した。
世界最速ランナー、ウサイン・ボルト(ジャマイカ)でも17歳時の最高が10秒09だっという。
日本記録は伊東浩司(日本陸連・男子短距離部長)が1998年アジア大会でマークした10秒00である。
2001年に朝原宣治が10秒02、03年には末続慎吾が10秒03をマーク。日本人選手は、超えられそうで超えられない「10秒の壁」にぶつかってきた。
10秒00 伊東浩司
10秒01 桐生祥秀
10秒02 朝原宣治
10秒03 末続慎吾
東京オリンピックのころ100mの日本チャンピオンは飯島秀雄である。
彼の日本記録は10秒34である。(手動掲示では10秒1)
彼の走りは、50mまでは世界1速い走りだと言われた。
敏捷性と集中力にすぐれ、抜群のスタートダッシュと言われた。
彼のスタートは「ロケットスタート」と言われた。
今の時代に生きていれば、間違いなく9秒台で走っていただろう。
カールルイスとオリンピックの決勝で争って優勝したベン・ジョンソンがいた。
彼は、筋肉増強剤をコーチと科学者に投与され、世界一となり、その後アメリカによって金メダルと世界記録を剥奪された。
ベンの専属コーチは、60mまで世界の誰よりも速く走れる筋肉を作れば、後の40mは技術でカバーできると考え、それを証明した。
飯島選手は、50mまでは世界一の速さを持っていた。
しかし、その頃の日本のコーチは、後半の走りの技術を持っていなかった。
陸上競技のオリンピック種目で一番短い距離が100m走である。
一般の人は、100mという距離は、全力で走りきれると考えるが、それは大きな間違いである。
全速力で走れる距離は60mである。
現在の科学でわかっていることは、上手に走らないと100m走では、後半に必ず失速すると言うことだ。
そのため、色々な仮説を立てて、100mを走る技術が開発されている。
末続慎吾選手が取り組んだのは、「忍者走り」という走法だ。
重心を落として、体重移動による走りで、筋肉をできるだけ使わない走りをイメージした。
難しい走り方だったので、あまり広まらないうちに消えた。
現在の理想の走り方は、リニアモーターのような走りである。
全天候型のトラックは、硬く、反発係数が高くなっている。
つまり、相当な筋力がないと怪我をしてしまうし、走りにくい。
今の選手は、筋力トレーニングによって、強大なパワーを身につけ、身体を空中に浮かし、堅い地面をプッシュして進んでいくという感じだ。
地面をひっかいて前に進むという昔の走りのイメージでは、前半でパワーを使い切ってしまい、後半に減速して、勝負に負けてしまう。
桐生祥秀選手や女子選手の土井杏南選手の走りは、まさに現代の走り方である。
二人とも高校生であるが、綺麗なダイナミックなフォームではない。
フォームはコンパクトで上体のぶれはなく、速いピッチで走っている。
地面をキャッチする技術が素晴らしく、ブレーキがかかっていないため、ロスが少ない。そのため後半の減速が少ない走りとなっている。
最近は競技場にも行っていないので、実際の走りを見ていないが、動画等で見る限りでは、今までに無いタイプの二人である。
日本人初の9秒台も今年中に見られるかも知れない。